「派遣で介護の仕事を始めたけど、自分にあった職場じゃないので、すぐに辞めたい」と、考えていませんか。
しかし、派遣で働いたばかりだと、すぐに辞められるのか悩んでしまいますよね。すぐに辞めたらペナルティがあるかもしれないと思うと、なかなか決断できません。
そこで今回は、介護の仕事を19年、現場の職員から施設ケアマネ・管理職を経験し、今も介護派遣で働く筆者が介護派遣をすぐ辞めるとどうなるのかを明らかにします。
介護派遣は原則契約期間の途中で辞めることはできない
正社員のように無期雇用で働く場合は、2週間前までに退職の意思を伝えれば辞められます。しかし、介護派遣は有期労働契約であるため、契約期間中にすぐ辞めることは原則としてできません。
たとえば、契約期間が3か月と決められている場合、労働者も雇用者もお互いに3か月の間は、雇用に関する義務を果たさなければならないのです。
ただし、やむを得ない理由がある場合は、契約期間の途中でも退職できます。
介護派遣が契約期間中にすぐ辞めるのが認められるケース
契約期間が決められている介護派遣でも、やむを得ない理由がある場合はすぐに退職できる可能性があります。
民法第628条では「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」とされている
契約を守ることは大切ですが退職しなければならない理由がある場合は、あなたの健康や生活を守るため早めに派遣会社に相談し、適切な手続きを取ってください。
出典:e-GOV「法令検索」(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
介護派遣を辞めたいと思っても避けるべき行動
介護派遣を辞めたいと思うと、急いで行動を起こしがちです。しかし、性急にことをすすめると、トラブルにつながる可能性があります。
以下では、辞める際に避けるべき具体的な行動について解説します
- 誰にも相談せずバックレる
- 派遣会社へ連絡せずに退職届を提出する
誰にも相談せずバックレる
介護派遣を辞めたいからといって、誰にも相談せず突然辞めるのは避けた方がいいでしょう。
黙って仕事をバックレると、派遣会社や派遣先施設に迷惑をかけてしまいます。派遣先にはもちろん、派遣会社もバックレる人材を紹介してしまったことで信用を落としてしまうのです。
相談なくバックレても、損害賠償のようなペナルティを受ける可能性は低いでしょう。しかし、今までの派遣会社からは仕事を紹介してもらえなくなる事態が考えられます。
また、無断欠勤が続けば、派遣会社があなたを解雇するケースも考えられるでしょう。
派遣会社へ連絡せずに退職届を提出する
派遣会社に相談なく、直接派遣先へ退職届を提出してはいけません。
派遣先に退職届を提出した場合、派遣会社は必要な手続きが取れません。場合によっては、次の派遣先の紹介や契約の更新を断られてしまう可能性があります。
そのため、退職を考えた際はまず派遣会社に連絡し、適切な指示を受けてから行動にうつしましょう。
介護派遣が途中で辞める理由と対処法
介護派遣はやりがいのある仕事ですが、さまざまな理由からすぐに辞めてしまう方も少なくありません。
ここでは、よく見られる5つの辞職理由とその対処法について、詳しく解説します。
- 人間関係に悩んでいる
- 上司からパワハラを受けている
- 体力的についていけない
- 将来への不安が消えない
- 契約条件と異なる仕事を求められる
人間関係に悩んでいる
公益財団法人 介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査」によると、介護従事者の退職理由では「職場の人間関係に問題があった」が、34.3%と最も多い理由でした。
介護派遣も例外ではなく、人間関係の悩みが退職の大きな原因です。介護派遣は職場での立場が正社員と異なるため、コミュニケーションが取れず疎外感を覚える方もいます。
コミュニケーションがうまくいかない職場では精神的に大きなストレスを感じるため、早期に退職したいと考えるようになるのも当然でしょう。
人間関係で悩んでいる場合は、すぐに派遣会社に相談してください。派遣会社は仲介役として、あなたの代わりに派遣先と改善に向けて話し合ってくれます。
改善が難しい場合は、派遣先を変えてくれるケースもありますよ。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」(https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023_jittai_chousagaiyou.pdf)
上司からパワハラを受けている
上司からのパワハラを受けている場合、介護派遣をすぐに辞めたいと考えるのが普通です。
上司の立場を利用した嫌がらせや不当な指示は、非常に大きなストレスとなります。強いストレスを感じる状況が続くと精神的に消耗してしまうため、派遣先で働き続けるのは困難でしょう。
世の中には「派遣社員には高い時給を払っているから」と、元を取るために叱責してでも派遣社員をこき使おうとする上司もいるようです
体力的についていけない
体力的に介護の仕事がきついと感じる場合も、介護派遣を辞めようと考えるでしょう。
たしかに、介護職は利用者さんをベッドから車椅子へ移動介助したり、中腰でオムツ交換をしたりと、重労働と言っていい仕事です。
しかし、介護の負担は介護技術を高めれば改善できる可能性があるため、自分の介護技術を見直してみましょう。
介護派遣会社の中には、初任者研修などの研修を実施しているところもあります。
基本的な介護技術が身に付いていないために業務がきついと感じている方は、適切な介護技術を身に付けて身体への負担を減らすことを考えてみてください。
将来への不安が消えない
介護派遣で働く方には、先行きが見えない不安から退職を考える方もいます。とくに、以下の3点に不安を感じるようです。
介護派遣で将来を不安のないものにするためには、資格の取得や研修の受講などで介護の技術・知識を身に付け、どのような職場でも活躍できる能力を磨く必要があるでしょう。
契約条件と異なる仕事を求められる
介護派遣の仕事を辞めたい理由の一つに、契約条件と異なる業務を求められることが挙げられます。
どのような事情であれ、契約内容と違う業務を割り当てられるのは大きなストレスです。たとえば、契約では日勤のみとされていたものが、突然夜勤業務に入ることを求められるケースもあるようです。
そのため、契約にない業務を要求された場合はすぐに派遣会社に報告し、担当者から派遣先に対して契約を順守するように求めてもらいましょう。
介護派遣を辞めたいと感じたら行うべき3つの行動
介護派遣の仕事を続けることが難しいと感じたら、何をするべきでしょうか?
以下に、辞めたいと感じたときに行うことを3つ紹介します。状況をより良いものにするため、記事を参考に行動を起こしましょう。
- 派遣会社の担当者と相談する
- 派遣先の施設と話し合う
- 状況が変わらなければ派遣先・派遣会社を変える
派遣会社の担当者と相談する
介護派遣を辞めたいと感じたら、派遣会社の担当者と相談することが重要です。
担当者はあなたの状況を理解した上で、派遣先と相談してくれます。また、仕事内容やシフトの調整、ほかの派遣先の紹介など、現状を改善するためのさまざまな手助けをしてくれるでしょう。
派遣先の施設と話し合う
派遣会社と相談した後、場合によっては派遣先の施設と話し合う必要があります。
派遣先とコミュニケーションを取れは、問題となっている原因が明らかになります。原因がわかれば、問題を解決する手段が見つかるかもしれません。
たとえば、業務の負担が重すぎる場合には、具体的にどの部分が負担になっているのかを伝えてください。何が負担となっているのかがわかれば、業務内容を見直してもらえる可能性があります。
派遣先と話し合うことに抵抗がある方もいるでしょう。しかし、派遣先の話し合いは担当者が間に入って話を進めてくれるため、心配する必要はありません。
状況が変わらなければ派遣先・派遣会社を変える
派遣会社や派遣先と話し合いをしても状況が改善しない場合、派遣先の変更を検討しましょう。
自分に合わない環境で働き続ければ、心身の健康に悪影響を及ぼします。そのため、派遣先での問題が改善されない場合、別の派遣先で新たなスタートを切った方が手っ取りばやく解決する可能性があります。
介護派遣をすぐに辞める場合でも円満退社を目指した方がいい
介護派遣をすぐに辞める場合でも、派遣先との関係は良好に保ちたいものです。そのため、今後のキャリアへの影響を考えて、円満に退社できるようにしてください。
退職時に関係がこじれてしまえば、派遣先はもちろん派遣会社からの信用も失いかねません。派遣会社としても、信用できない人を紹介しようとは思わないでしょう。
反対に、円満に退社できれば派遣会社からの信用も強くなるため、就職活動を良い方向に進められます。
介護派遣を辞めたいと伝えるタイミング
派遣先を円満に辞めるためにも、適切なタイミングで退職の意思を伝えましょう。介護の業界は横のつながりが多く、悪い評判が立つと次の就職にも影響がでる可能性があります。
派遣会社も評判の悪い派遣職員を、 ほかの派遣先へ紹介しづらいでしょう。以下では、退職を告げる適切なタイミングについて、わかりやすく解説します。
退職の意思は、次の2つのポイントをおさえてください。
- 退職(登録解除)の意志は1か月前までに伝える
- 忙しい時期はなるべく避ける
退職(登録解除)の意志は1か月前までに伝える
介護派遣を辞める意志は、できるだけ早めに連絡しましょう。少なくとも1か月前には伝えてください。
民法では2週間前とされていますが、派遣先としては次のスタッフの手配をするために、1か月は欲しいところです。
2週間前では代わりのスタッフを確保できず、利用者さんに提供するケアを落とさざるを得ないでしょう。その結果あなたへの印象が悪くなる可能性があり、円満に退職できなくなる事態が考えられます。
そのため、退職の意志は1か月前に伝えるのが、お互いにとって最良の方法です。
忙しい時期はなるべく避ける
介護派遣を辞める際には、忙しい時期をなるべく避けましょう。繁忙期に退職すると、他のスタッフの負担が増え、利用者へのケアに支障をきたす恐れがあります。
たとえば、年末年始や大型連休中は施設も忙しく、スタッフ不足が顕著になります。忙しい時期に辞めると、ほかのスタッフが残業を余儀なくされる可能性があります。
介護派遣を辞めても後悔しないためにやっておきたいこと
介護派遣の仕事を辞めたあとは、事前に自分の気持ちを整理し、次の仕事に向けて準備をしておくことが重要です。
以下では、自分に合った職場を見つけるためにやるべきことを2つ紹介します。次の職場で後悔しないためにも、2つのポイントを押さえてスムーズに転職活動を進めてください。
- 辞めた理由を振り返る
- 自分の理想にあった派遣会社・転職先を探す
辞めた理由を振り返る
次の派遣先では同じ間違いをしないためにも、退職に至った理由を探って改善しましょう。
退職の理由を明らかにできれば今後の働き方を見直すきっかけになるため、同じ失敗を繰り返すことはないでしょう。
たとえば「労働環境が厳しかった」「仕事内容が自分に合わなかった」など、具体的な理由を挙げてみてください。
振り返りを行い具体的な理由がわかれば、自ずと自分の理想とする職場が見えてきます。
自分の理想にあった派遣会社・転職先を探す
理想の職場がイメージできれば、実際に理想の派遣会社や転職先を探してください。自分に合った職場を見つけられれば、介護派遣でも充実して仕事に打ち込めるでしょう。
そのため、派遣会社や転職先を探す際は労働条件やサポート体制、福利厚生など、自分の理想とする条件でリサーチしましょう。
リサーチでは、インターネットの評判や口コミなども活用してください。また、複数の派遣会社を利用して比較するのも有効です。
介護派遣をすぐ辞める場合は後悔しない準備が大切
介護派遣は契約期間中の退職は原則できませんが、以下のようなやむを得ない事情があれば辞められます。
- 心身の不調があるケース
- 家族を介護・看病しなければならないケース
- 通勤が困難な地域へ引越しするケース
辞めると決めた場合でも、誰にも相談せずバックレたり派遣先へ退職届けを出したりしてはいけません。また、退職を伝えるタイミングにも気を配りましょう。
退職を決めた場合は退職する理由を振り返れば、次の派遣先探しに活かせるのでぜひ行ってみてください。
介護派遣は自分のライフスタイルに合わせられるため、柔軟な働き方を求めている方にピッタリです。そのため、すぐ辞めてしまう事態にならないように、派遣先について十分リサーチを行ってください。